【インデザインのこと】Symbolフォントの流し込みで起こる不具合について
印刷屋が口をそろえて「Symbolは置き換える」というのはどういうことなのか、Symbolの何がいけないのか、今回はそのことについてお話します。
じゃ、ないんですよ!
Symbolとは
Symbolはフォントのことです。ただ、普通のフォントと少し違います。
文字は0~9とA~Fの文字であらわすユニコードでなんの文字を示すかが決まっています。
例えば、0021は「!」になりますし、「1」は0031です。
これ↓はMS明朝の0020~011Fの範囲の文字一覧です。ATOKの文字パレットで表示しています。
ほとんどのフォントはMS明朝と同じような配列になっています。そこで、A~zまでの配列を覚えておいて、Symbolの同じ範囲の一覧を見てください。
A、B、X・・・?
これはギリシャ文字の「カイ」です。A~zの範囲がアルファベットではなくギリシャ文字になっているんです。
このようにSymbolは他のフォントとは違った文字を表示させる独自の世界観を持っています。
つまりSymbolで「α」と表示されていても、インデザインで組版したときにフォントが変わると、「a」と表示される現象が起きるんです。
・・・と、そう単純に完結できないのがSymbolというフォントなのです。
Word原稿をインデザインに流し込む
WordでのSymbolフォントの表示とSymbol独自の世界観
大体の原稿はWordで作られると思います。
色んな人が独自の感性で作る原稿は文字の大きさ、フォント、行間、字下げ・・・あらゆるところに個性があります。これをそのまま一つの冊子に収めると個性のぶつかり合いが起きます。文章を読んでいて、見出しのレベルがつかみにくい、読みにくいなど様々なエラーを起こします。
その体裁を整えて、読みやすく、読者に疑問を持たせない・迷わせないように作り上げるのが「組版」です。
その際、フォントの統一をします。
すると、Symbolで「α」としているのに「a」と表示される不具合が起こる・・・。
ならば、文字をすべて置き換えればいい。Symbolの「α」をMS明朝の「α」と同じコードに置換すればいいとなります。
Symbolは他のフォントとは違った文字を表示させる独自の世界観を持っていると先述しましたが、ここでF020~の一覧を見てください。
↑はSymbolのF020~F11Fの一覧です。あれ?さっきと同じ・・・?
ではこの範囲の文字をMS明朝で表示させます↓。
何も表示できません。当然です。この範囲は「外字」とか「私用領域」とか呼ばれるエリア・・・。まさに未開の地、もしくは各々が持つ個性の主戦場なのです・・・!
組版屋にとってここは魔界・・・。触れたくない、関わりたくない領域といっても過言ではありません。
さらに恐ろしいのが、↓の一覧です。
これはF020~F11Fの範囲をWordに流したものです。「A」と表示されている文字を選択している状態です。フォントの表示欄を見てください。「MS明朝」と表示されているのがお分かりでしょうか・・・。
一つ前の画像ではMS明朝はF020~F11Fの範囲の文字を表示できていません。
Wordは指定されたフォントで表示できなくても、無理矢理表示させてしまうことがあるんです。
Symbol特有の文字コードの範囲を入れたWordをインデザインに流し込む
↓はWordにF020~F11Fの範囲の文字を流したものです。
上の表はSymbol、下の表はMS明朝に設定してあります。F061がSymbolでは「α」MS明朝では「a」と表示されている時点で、このデータはもう只者じゃないんですけどね・・・。
このWordを「.doc」と「.docx」に保存して、それぞれインデザインに流し込んでみます。
Word上の設定をそのまま生かす形で流し込みます。
↓は流しっぱなしの状態です。
スタイルを当ててみます。今回は面倒なので「基本段落」でいきました。
WordではF061がSymbolでは「α」MS明朝では「a」と表示されていましたが、どちらも「a」と表示されています。つまりWord→インデザインの過程で文字コードが勝手に置き換わっているということになります。
しかも「.doc」と「.docx」で結果が違います。もう何が何やら混乱します。
さらに、混乱することに、今度はコピペしてみますね。
.docxの隣にコピペしました。
Symbolの方は文字が表示されていません。F020~F11Fの範囲の文字を表示できるはずがないのですから考えてみれば普通のことです。
しかし、MS明朝の方はどうでしょう?
このようなことがあって、印刷屋はみんな「Symbolは置き換えるのでご了承ください」≒「Symbol使わないでほしい」と言っているのです。
Symbolのリスクを回避する
と、いかにSymbolが危険なフォントかお話ししてきましたが、このリスクとどう向き合うか。
今までの検証からお分かりいただけると思いますが、インデザインに流す前に「Word上でコードを置き換える」しかありません。
インデザインにしてからでは置き換えは不可能です。だって勝手に置き換わっちゃってんだもん。
Wordのマクロ使えば一括置換できますし、ワークフローに必ず適用するマクロを用意するのは組版屋の鉄則です。その中に入れておけばよいのです。ただ、すべてのSymbolフォントを網羅するのは大変です。網羅したと思っていても思わぬところに文字を持っている可能性はあります。
私もこの間プライムで化けてしまいました。
みんな頑張ろうね!